上海ベイベと香港ガーデン

自堕落な元バンドマンの独り言集。

実際的存在

お菓子の袋をまさぐって、愛らしく咀嚼する仕草や 真剣に漫画を読む表情 そこには一抹の不安もなく、平穏そのもののように思われる どんな請求書の波も脅かすことのない平穏だった 時には憂鬱の中にいて 己を責める背中にかける言葉もなく 少ない優しさを分…

黒いほのおの両の手が 空に向かって何度も何度も、伸び縮み お月様はそれを見て笑っていました ほのおは草も土塊も飲み込んで やがて風を焦がし海を走った お月様はそれを見て笑っていました 彼は疲れ果て路傍に佇み、怒号を放ちて 最後に私を焼いて消え去り…

独白

胸の真ん中のあたりが疼いています。いてもたってもいられない苛立ちに、わあっと叫びたくなる衝動が、夜を奔走しているのです。とうに忘れたはずの哀しみが蘇って、それを投げ破ってしまいたい気持ちと、懐かしむ気持ちとを抱えてまた夜を越えました。それ…

少年は空を見ない

俺が英語を担当している生徒の、数学を担当している先生が憤っていた。「英語13点ですよ。しかも空欄だらけで、記号問題さえ書いていない。やる気を感じない。」云々。「まあ、ねえ。」と濁していたが、努力すれば半分、いや、80点だって取れるんです。高校…

怪物の胃袋

嵐は猛り狂っていた。楽観して帰路に着いたものの、傘はすぐに無用になった。靴の中は水たまりになっていた。服が重い。目も開けるのも一苦労という、そんな夜だった。すぐ先のほうが全く見えず、絶えず稲妻の低音が唸り、数分おきに巨大な破裂音をあげてい…

芸術真髄

芸術とは詰まる所、なにであるのか。 これを問うたことのない人間には矢張り、生涯わからぬものであることは間違いない。衆愚である。しかしまた、衆愚を嗤う者もまた衆愚である。衆愚とは、時間が過去から未来へと流れ行くという近代意識の信者であるととも…

風立ちぬ(Le vent se lève, il faut tenter de vivre)

風立ちぬ。こんな詩情に溢れた表現は滅多にないと呻吟していた。正しくは、「風立ちぬ。いざ生きめやも。」というヴァレリーの言(の堀辰雄訳)である。ちょいと調べてみると、「め」は推量、「やも」は反語の表現であり、元来の「さあ生きよう」というニュア…

ほとんど詩

インスピレーションはいつも、眠ろうとしたら急に降ってくるもの。と言いたいが、これは酒の勢いに任せたストレス解消かもしれない。 「観念の深度がそのまま作品の深度だが、そんなことはつゆとも考えず良い作品を書く人もいる。」と大体こんな具合の文章を…

ものを書く理由

塾講師として働き始めて早数ヶ月が経った。最初はただ目の前の仕事の新鮮さと面白さに夢中になっていたある日、塾長に「将来的に塾長になるの?」と言われた。 「や、そこまではまだ」と答えた。 しかしまあ、講師だと月収が雀の涙なので30代でアルバイトを…

Sympathy for the devil

ブラックメタルを漁って見たものの、やっぱりなんか違和感は拭えないねえ。ブラストビートが玩具っぽくて笑っちゃうのが大きい。籠もったノイズギターは好きなのでそれでイケる感じ。Burzumのそれは特にレンジがあっていい。 ま、それはさて置き。ブラックメ…

Autumn Leaves

や、お久しぶり。随分間が空いてしまったが、どうも俺は友人から催促されないとブログの存在を忘れてしまうらしい。今夜はなんだか眠れなくて、紫煙を燻らせていたらこんな時間になってしまった。腹が減っていよいよ眠れない。すると、ほとんどの人がそうで…

炭酸

以前から毎回ブログを読んでいただいてる友人から 「いつもタイトルから考えてる」という回と「最後にタイトルをつける」という回があって、その日その日で言ってること違うのが君らしい。 と言われまして。はて、そんなこと書いたかしらと不思議な気持ちに…

恋破れて山河あり

文筆家を志す友人の原稿をいただいた。これがなかなか面白くて、勝手に校正などしてるうちにムラムラと、文章書きたいなぁと思いブログをまた新しく始めた次第。 年も明けたばかりだし、古い衣を脱ぎ去り新しく何か始めようとするのは良いことなのではないか…

クリスチャンよりセバスチャン

俺の部屋にカーテンはある。が、窓についてない。正しくは窓につけていない。煙草のヤニで黄ばんだカーテンを見てなんとなく洗ってみたが、つけるのが面倒くさくなって床に放り投げたまま二週間経った。日差しが恨めしい時は雨戸を閉めて、暗闇を愉しむ。一…

真夜中のドライブ

10年ほど前、16、7歳の頃の風景をやけに思い出す。 俺はゲーセンで知り合った仲間とよくつるんでいて、それぞれ22歳、25歳、28歳とやけに歳上の仲間と夜通し遊び続けてた。基本的に閉店までゲーセンにいて、その後仲間の家で朝までたむろするのが日常だっ…

表現に関する個人的ハウツー

当ブログは一体どの層の読者にウケているのか俺にも見当がつかないが、昨今たまに人と会うと「ブログ読んでるよ。」などと思いもよらぬ出所からチラホラ耳にするので更新を頻繁にしようと思う。ツイッターをやってない方はわざわざ検索してくださるようで、…

蜘蛛

部屋に散乱した缶ビールとペットボトルをようやく片付けた。床に転がったり、窓枠に並んだそれらは数十本に及んだ。その時脱ぎ散らかした衣類の隙間から、俺の荒廃した生活を象徴するかのように小指の爪ほどの蜘蛛が一匹這い出てきた。殺そうと思ったが、そ…

午睡

太陽が冬の薄い空気を貫いて枯木の肌色を美しく見せるので、もう二月も終わりか、と感じた昼下がりである。毎年、二月から四月にかけては感傷的になりやすい。 先日女にフラれてから本当に卑屈になってしまったみたいだ。ただただ当て所なく飲み歩いて、素面…

坂口安吾読後感

「人間が過つことに、何も問題はない。過った人間に問題がある。」 上は僕自身の発明した言である。確かに言葉は人間を創造発見することに疑いが無いことを確認した。 というのも、暫く前に「お前は坂口安吾のようなところがある。」と指摘され、随分前に読…

座間の連続殺人と自殺に関連した夢想的なエッセイ

何か悪いことやって 捕まってしまおうかな 欲しいものは諦めてる 持ってるものにも 飽きてきた どうにもならんし どうにかなるかな 金持ったら変わるかな 誰かを守る為に変われるかな すぐに忘れるわこんなこと https://youtu.be/dqiEz1GQyIQ ロックバンド、…

中二病っていうな!

ラノベみたいなタイトル付けたいなと思ってこれにしました。毎度毎度のことですが写真はパッケージで特に意味は無い。眠いのに寝れない時もしくは酔ってる時にガーッと言葉を弄ぶ癖があって、だいたいブログはそのテンションで書ききってあとは出来も整合性…

書を読もう 家に帰ろう

この「書を捨てよ 町へ出よう」は今日未だに一部熱狂的な支持のあるアングラ劇作家、寺山修司の作品である。二十歳前後の時分に彼の作品群をいくつか人並には知見したのだが、一言で言えば彼のアヴァンギャルドな表現は特殊(すぎる)な世界感のメタとして現実…

絵画貧乏

大した資産もないのに高級外車の為に生活費を削り、全てを投げ出す人種がいて、それを車貧乏という。この時勢なかなか聞かなくなったが。対して絵画貧乏とは古今東西めったに聞かない。 車なら虚栄にもなるだろうが、絵画となれば美に対する執着がより多く割…

光線の入射角

昔からある金言に、歳とともに納得させられることがあるだろう。 「初心不可忘」「継続力也」等々、近日身を以て感じるばかりである。金言の金言足る所以とは、その実の無いことだろう。非常に柔軟な形式のみがある。占いと一緒だ。その実は万華鏡の若く光線…

美的観念

美学は個人のアイデンティティといえる。作品の趣味嗜好が個人としての本質を露わにするために、この種の話題のために知識の蒐集に苦心する愛すべき痴れ者もいるほどに(俺もこの手の話題になると相当の嘘吐きなんだけど)。 別に作品に限らなくとも顔の好みに…