Sympathy for the devil
ブラックメタルを漁って見たものの、やっぱりなんか違和感は拭えないねえ。ブラストビートが玩具っぽくて笑っちゃうのが大きい。籠もったノイズギターは好きなのでそれでイケる感じ。Burzumのそれは特にレンジがあっていい。
ま、それはさて置き。ブラックメタルと言ったら悪魔崇拝がテーマなんだが。
…………えっ今更?
感がまたもや拭えない。そもそも原義的にロックミュージックはそういったものと近しいし、何より相変わらずテーマを掲げて表現の幅を自ら狭めるのはアーティストとして自殺行為なのでは。今までメタルを嫌疑してきたのも、特にそういったコミック色が強いからというのもあったからだ。むしろ大槻ケンヂのほうがメタルらしいメタルをやってたりやってなかったりするのである。逆説的に。
閑話休題。悪魔崇拝の話に戻るわけだが、芸術として根本的な話をすれば、それが表現できていなければブラックメタルも童謡以下である。で、ばっさりと切り捨てるができているバンドはいない。こんなチープな音で、デスボイスで、直接的な表現で、魑魅魍魎だって召喚できるものか!!とモヤモヤしてたまらなくなったので悪魔に魅入られたホンモノを紹介していく。
早速ロバート・ジョンソンのクロスロードとは俺も芸がないとは思う。十字路で悪魔と契約したという有名なあの曲。別にそういう背景だから載せたわけではなくて、音が完全にイかれてるから載せた。俺はこれ以上に訳の分からない曲をそう多くは知らないし、形而上のなにかに触れるような真髄は生楽器でないと辿り着かないのではないかと思わせる。初めてこれを聴いた18歳の時、俺はなんだかよくわからなかった。これから初めて聴く人も、なんだかわからないだろう。これは音楽に精通してるかどうかとは別のところに原因がある。
ビリー・ホリディ。俺が知る中で最も深く、強く、羽のように軽い歌声のシンガーである。もっと陰惨で有名な曲はいくらでもあるんだが、むしろ長調のほうがコントラストが効いて彼女の薄幸な感じを際立たせるように思う。いつも聴くたびにセイレーンの歌に捕らえられた船乗りのような心地になる。パーカーが鳥なら彼女は人魚だ。
ビル・エヴァンス。彼の即興が「ゾーン」に入るといつも前のめりで食い気味のテンポになる。とにかく早い。生き急いでいるような印象を受けるのである。彼はいつも俯いて演奏するがもちろん鍵盤なんか見ていない。足元の先にあるのは生か死か、いずれにせよ、こんな明るい曲でも緊迫したプレッシャーがどこかにあるのである。
マイブラは、堕落の底で見える世界。希薄な存在を繋ぐように痛みと快楽を貪るうちに、壊れていった世界の心象風景である。ノイズの層が作り出す愛なき世界はただただ何の意味も目的もなく標榜する。